📋 目次
PART 1
自己評価は誰が、何のために読むのか
自己評価シートを前にすると、多くの人が「何を書けば評価が上がるのか」を考えます。しかし最初に考えるべきなのは、この文章を誰が、どんな状況で読むのかです。
自己評価を読むのは主に直属の上司です。上司は部下全員の評価を短い期間でつけなければならず、さらにその評価を二次評価者や評価会議で説明する必要があります。つまり上司は、あなたの自己評価から「評価の根拠として人に説明できる材料」を探しています。
この前提に立つと、良い自己評価の条件ははっきりします。上司が半年分の仕事を思い出さなくても、あなたの成果と行動がそのまま説明できる状態になっていることです。
| 上司が困る自己評価 | 上司が助かる自己評価 |
|---|---|
| 「一生懸命取り組みました」など気持ちだけが書かれている | 何をして、どうなったかが一文で分かる |
| 業務内容の羅列で、成果が分からない | 業務の結果と、その結果が誰に役立ったかが書かれている |
| 謙遜しすぎて、実際より小さく見える | 事実をそのまま書き、評価は上司に任せている |
| 課題が「特になし」 | 課題と、すでに始めている改善が書かれている |
💡 自己評価の目的を一言で
自己評価は「自分の評価を自分で決める場」ではなく、上司が正しく評価できるように事実を渡す場です。そう考えると、盛る必要も、遠慮する必要もなくなります。
PART 2
人事考課の中で、自己評価はどう使われるか
多くの会社では、人事評価(人事考課)を上期・下期の半期ごと、または年1回行います。目標管理制度(MBO)を取り入れている会社では、期首に目標管理シートへ個人目標を書き、期末に自己評価を記入して上司との面談に臨む、という流れが一般的です。
期首:目標設定と期首面談
個人目標と達成基準を上司とすり合わせ、目標管理シートに記入します。
期中:中間面談・1on1
進み具合を確認し、状況が変われば目標を見直します。
期末:自己評価の記入
目標ごとの結果と、行動面の振り返りを自己評価欄に書きます。
一次評価・二次評価
直属の上司(一次評価者)が評価をつけ、その上の上司(二次評価者)が確認します。部署間の甘さ・辛さをそろえる評価会議(調整会議)を行う会社もあります。
フィードバック面談
確定した評価、または確定前の評価が本人に伝えられ、次の期の目標につながります。
評価シートの中身は会社によって違いますが、目標の達成度を見る業績評価、仕事の進め方や発揮した力を見る能力評価・行動評価(コンピテンシー評価)、規律性・責任性・協調性・積極性といった仕事への姿勢を見る情意評価の組み合わせがよく見られます。この記事で扱う「成果」は業績評価に、「協働・主体性・成長」は能力・行動評価や情意評価に対応すると考えると、自社のシートに当てはめやすくなります。
| 評価シートの区分 | 主に見られること | 自己評価で書くこと |
|---|---|---|
| 業績評価(目標達成度) | 期首に立てた目標をどこまで達成したか | 目標と同じ物差しでの結果、達成・未達の理由 |
| 能力評価・行動評価 | 職務に必要な力をどんな行動で発揮したか | 具体的な場面と、自分が取った行動 |
| 情意評価 | 規律性・責任性・協調性・積極性など仕事への姿勢 | 姿勢が表れた行動の事実(形容詞ではなく) |
区分の名前や項目は会社によって異なります。自社の評価制度の資料で確認してください。
評価の結果は、賞与の査定や昇給、昇格・昇進の判断に使われることが多いものの、どの評価をどの処遇にどう反映するかは会社ごとに決められています。いずれにしても、上司が評価会議で「この評価にした理由」を説明するとき、手元にあるのはあなたの自己評価と日頃の記録です。自己評価は、その説明の材料になる文書だと考えて書きます。
⚠️ S・A・Bなどの評価記号を自分でつける場合
自己評価欄に評価記号(S・A・B・C・Dなど)を自分でつける様式もあります。記号は気持ちで選ばず、評価制度の資料にある段階の定義(例:「期待を上回る」「期待どおり」)と、自分の根拠を照らし合わせて選びます。根拠に見合った記号であれば、高くても低くても説明がつきます。
PART 3
書き始める前に集めておく材料
自己評価がうまく書けない原因の多くは、文章力ではなく材料不足です。期末になってから半年分を思い出そうとしても、印象に残った数件しか出てきません。書き始める前に、次の材料を手元に集めます。
☐ 期初に立てた目標と、その達成基準(目標シートのコピー)
☐ 期中に提出した週報・月報・日報
☐ 担当したプロジェクト、案件、問い合わせの一覧
☐ 関係者からのお礼や評価のメール・チャット
☐ 自分が作った資料、手順書、仕組み
☐ 期中に起きたトラブルと、その対応
☐ 期中に変わった役割や追加された業務
材料が集まったら、すぐに文章にせず、まず箇条書きで「やったこと」と「その結果」を並べます。結果が書けない項目は、評価の材料としては弱いので、自己評価の中心からは外します。
毎日の業務を一行ずつ記録しておくと、この作業がほとんど不要になります。手帳でも表計算でも構いませんし、PLAN2FOLIOのように一行の記録を職務の成果ごとにまとめてくれるアプリを使う方法もあります。大切なのは、期末に思い出すのではなく、日々の事実が残っている状態を作ることです。
PART 4
自己評価の基本の型 — 結論・行動・結果・次
どの項目にも使える基本の型は、次の4つの要素です。この順番で書くと、読む人が迷わずに内容を理解できます。
結論(どうだったか)
目標を達成したか、どの程度進んだかを最初に一文で書きます。「目標の新規契約10件に対し、12件を獲得しました」のように、評価の答えを先に示します。
行動(何をしたか)
結果につながった自分の行動を2〜3点書きます。担当業務の説明ではなく、自分が工夫した点、判断した点を中心にします。
結果・影響(何が変わったか)
行動によって何が変わったか、誰の役に立ったかを書きます。数字で示せる場合は数字で、示せない場合は変化の前後で示します。
次(どうつなげるか)
今期の経験を来期にどう活かすかを一文で添えます。これがあると、評価面談で話が前に進みやすくなります。
✍️ 基本の型で書いた例
結論: 今期の目標である「問い合わせの一次回答を当日中に返す割合を上げる」は、期初より大きく改善し、達成と考えています。
行動: よくある質問を20件に整理して回答テンプレートを作成し、チーム内で共有しました。また、回答に迷う問い合わせの相談先を一覧にしました。
結果: 当日中の一次回答が増え、問い合わせの再送や催促の連絡が目に見えて減りました。新しく配属されたメンバーもテンプレートを使って初週から対応できています。
次: 来期はテンプレートを四半期ごとに見直す仕組みを作り、内容が古くならないようにします。
⚠️ 「結論」を最後に書かない
日本語の文章は経緯から書きがちですが、自己評価では結論を先にします。経緯から書くと、読む人は最後まで読まないと評価の答えが分かりません。
PART 5
観点1:成果 — 目標に対して何を達成したか
成果の欄では、期初の目標に対する結果を書きます。ポイントは、目標と結果を同じ物差しで並べることです。目標が件数なら件数で、期限なら期限で結果を示します。
書き換え前→後
| 書き換え前 | 書き換え後 |
|---|---|
| 新規開拓に力を入れ、多くの顧客を獲得できました。 | 新規契約の目標10件に対し12件を獲得しました。うち4件は、既存顧客からの紹介によるものです。 |
| システム移行を無事に完了させました。 | 基幹システムの移行を予定どおり3月末に完了しました。移行後の業務停止はなく、問い合わせも想定の範囲内に収まりました。 |
| 経費精算の業務を効率化しました。 | 経費精算のチェック手順を見直し、差し戻しの多い項目を申請画面に注記したことで、月末の確認作業が以前より短く終わるようになりました。 |
目標を達成できなかったとき
未達の場合も、ごまかさずに結果を先に書きます。そのうえで、未達の理由を「外部要因」と「自分の行動」に分けて書き、自分の行動で変えられた部分について次の手を示します。
✍️ 未達のときの例文
新規契約の目標10件に対し、結果は7件で未達でした。
下期に主要顧客の予算凍結があり、見込んでいた3件の商談が延期になったことが大きな要因です。一方で、見込み案件を特定の顧客に集中させていたことは、自分の計画の弱さだったと考えています。
来期は見込み案件を業種ごとに分散させ、四半期ごとに偏りを確認します。
💡 未達は「隠す」より「説明する」
上司はあなたの結果をすでに知っています。未達を小さく書くよりも、原因と次の手が整理されている方が、評価会議で上司があなたを説明しやすくなります。
PART 6
観点2・3:協働と主体性 — 行動を場面で書く
協働(チームワーク)と主体性は、数字にしにくい観点です。ここで大切なのは、「協調性があります」「主体的に動きました」という形容詞ではなく、具体的な場面と行動で書くことです。
協働の書き方
協働の欄では、「誰と」「何のために」「自分がどんな役割を担ったか」を書きます。チームの成果を書くときは、その中で自分が担った部分をはっきりさせます。
✍️ 協働の例文
営業部との月次会議で在庫の見通しを共有する場を新しく設け、欠品の連絡が出荷直前になる状況を減らしました。資料の作成と会議の進行を私が担当しました。
繁忙期に隣のチームの受注入力が滞った際、自分の担当業務を調整して2週間応援に入りました。入力手順の違いを一覧にして共有し、応援メンバーが迷わず作業できるようにしました。
主体性の書き方
主体性は「指示されていないのに自分から動いたこと」です。気づいた問題、自分で決めて始めたこと、提案して実現したことを書きます。提案が通らなかった場合も、提案した事実と理由は書いて構いません。
✍️ 主体性の例文
同じ質問が何度も寄せられていることに気づき、上司に相談のうえ社内向けのよくある質問ページを作成しました。公開後は、同じ内容の問い合わせが減っています。
取引先への請求書送付が担当者ごとにばらばらだったため、送付日と確認方法を統一する案をまとめてチームに提案しました。来期から試行することが決まっています。
| 弱い表現 | 場面で書いた表現 |
|---|---|
| チームワークを大切にしました。 | 週1回の進捗確認で遅れているタスクを洗い出し、担当の入れ替えを提案しました。 |
| 積極的に業務に取り組みました。 | 担当外でしたが、取引先からの仕様変更の連絡を受け、関係部署3つに影響を確認して回りました。 |
| 後輩の育成に努めました。 | 新人2名のOJTを担当し、最初の1か月の作業手順をチェックリストにまとめて渡しました。 |
PART 7
観点4・5:成長と、課題と改善
成長の書き方
成長の欄では、期初にはできなかったが期末にはできるようになったことを書きます。資格や研修の受講だけでなく、学んだことを仕事でどう使ったかまで書くと説得力が増します。
✍️ 成長の例文
期初は会議の資料作成を先輩に頼っていましたが、下期からは月次報告の資料を一人で作成し、部長への説明も担当しました。
データ集計の研修で学んだ方法を使い、毎月手作業で行っていた売上集計を表計算の関数で自動化しました。
課題と改善の書き方
課題の欄に「特になし」と書くのは避けます。上司は、課題を自覚しているかどうかも見ています。ただし、課題を書くときは自分を責める文章にせず、改善の行動とセットで書くのが基本です。
| 避けたい書き方 | おすすめの書き方 |
|---|---|
| スケジュール管理が苦手です。 | 複数案件が重なった時期に、締め切りの近い案件を優先しすぎて、他の案件の着手が遅れました。現在は週の初めに全案件の締め切りを一覧で確認しています。 |
| もっと頑張ります。 | 後輩への説明が口頭中心で、同じ質問を何度も受けていました。来期は手順を文書にまとめ、説明の時間を減らします。 |
| 特になし。 | 担当業務の進め方が自分に依存しているため、休暇時に対応できる人がいません。来期は手順書を作り、引き継げる状態にします。 |
⚠️ 課題を書きすぎない
課題を5つも6つも並べると、全体の印象が必要以上に悪くなります。課題は1〜2点に絞り、そのぶん改善策を具体的に書きます。
PART 8
職種別の例文
同じ観点でも、職種によって書くべき成果の種類は変わります。ここでは代表的な職種ごとに、成果欄の例文を示します。数字はすべて書き方の例です。
営業職
✍️ 例
担当エリアの売上目標に対し、達成率は105%でした。既存顧客への定期訪問を月1回から2週に1回に増やし、追加発注の相談を早い段階で受けられるようにしたことが主な要因です。
失注した案件について理由を一覧にまとめ、チーム会議で共有しました。価格以外の理由で失注している案件が多いことが分かり、提案資料の見直しにつながりました。
事務・管理部門
✍️ 例
月次決算の締め作業で、他部署からの資料提出が遅れる原因を確認し、提出依頼の時期と様式を統一しました。締め作業が予定日より遅れる月がなくなりました。
入社手続きの書類を一覧にし、入社前に案内する仕組みを作りました。入社初日の手続き漏れによる差し戻しがなくなりました。
エンジニア・技術職
✍️ 例
担当機能のリリースを予定どおり完了し、リリース後の重大な不具合は発生しませんでした。テストの観点を事前にチームでレビューする手順を取り入れたことが効果的でした。
障害対応の手順書を整備し、夜間の一次対応を当番制で回せるようにしました。特定のメンバーに連絡が集中する状況が解消されました。
販売・接客・サービス職
✍️ 例
店舗の売上目標を3か月連続で達成しました。来店客への声かけの順番をスタッフ間で統一し、忙しい時間帯でも案内が途切れないようにしました。
お客様アンケートで多かった待ち時間への不満を受け、レジ応援の合図を決めました。ピーク時の待ち時間が短くなったという声をいただいています。
マーケティング・企画職
✍️ 例
新商品のキャンペーンを企画し、問い合わせ件数を前年同時期より増やしました。過去のキャンペーンの結果を整理し、反応の良かった訴求に絞ったことが主な要因です。
営業部からの依頼で作っていた資料の型を統一し、依頼から納品までの日数を短くしました。
PART 9
提出前のチェックリスト
書き終えたら、提出前に次の項目を確認します。一つでも当てはまらない項目があれば、その部分を直してから提出します。
☐ 各項目の最初の一文で、結果(達成・未達・進捗)が分かる
☐ 「頑張った」「努力した」など気持ちだけの表現が残っていない
☐ チームの成果の中で、自分が担った部分が分かる
☐ 数字で示せるものは数字で、示せないものは前後の変化で書いている
☐ 課題は1〜2点に絞り、改善の行動とセットになっている
☐ 期中に変わった目標や追加業務について触れている
☐ 上司がこの文章をそのまま評価会議で読み上げても通じる
☐ 誤字脱字、社内でしか通じない略語がない
💡 声に出して読んでみる
書いた自己評価を声に出して読むと、主語が抜けている文や、長すぎる文に気づきやすくなります。一文は60字程度を目安に区切ると読みやすくなります。
自己評価は一度書いて終わりではありません。評価面談で上司と話した内容をメモしておくと、次の期の目標設定や自己評価がずっと書きやすくなります。
よくある質問
Q. 自己評価は高めにつけた方が得ですか?
高くつけること自体よりも、評価の根拠が書かれているかどうかが大切です。根拠のない高評価は上司との認識のずれを生み、面談で説明を求められます。事実と結果をそのまま書き、評価段階は根拠に見合ったものを選ぶのが基本です。
Q. 謙遜して低めにつけるのはよくないですか?
日本の職場では謙遜が好まれる場面もありますが、自己評価で実際より低く書くと、上司がそれをそのまま評価に使ってしまうことがあります。達成したことは達成したと書き、謙遜は面談での話し方で示す方が安全です。
Q. どのくらいの文字数で書けばよいですか?
様式に文字数の指定があればそれに従います。指定がない場合は、各項目200〜400字程度が読みやすい目安です。長く書くよりも、結論・行動・結果・次の4要素がそろっていることを優先します。
Q. 目標が期中に変わった場合はどう書きますか?
元の目標、変わった時期と理由、変更後の目標を簡潔に書き、変更後の目標に対する結果を示します。上司と変更を合意した記録(メールや面談メモ)があれば、日付を添えると確実です。
Q. 数字で表せる成果がありません。
数字がなくても、作業の前後で何が変わったか、誰の手間が減ったか、どんなトラブルを防いだかで成果を示せます。詳しくは「数字で表せない成果の書き方」の記事で、型と例文をまとめています。
Q. チームで出した成果は自分の成果として書いてよいですか?
書いて構いませんが、チーム全体の成果と、その中で自分が担った役割を分けて書きます。「チームで〇〇を達成し、その中で私は△△を担当しました」という形にすると、誤解を生みません。
Q. 自己評価は賞与や昇給に影響しますか?
自己評価そのものが処遇を決めるわけではなく、多くの場合は上司の一次評価、二次評価、評価会議を経て評価が確定し、その結果が賞与や昇給、昇格の判断に使われます。反映のしかたは会社ごとに異なるため、自社の評価制度の資料で確認してください。ただ、上司が評価の根拠を説明するときの材料になるのは確かなので、事実を丁寧に書く価値はあります。
Q. 自己評価と上司の評価が違ったときはどうすればよいですか?
面談で、どの点に認識の違いがあるかを具体的に確認します。感情的に反論するよりも、上司が評価の根拠にした事実と、自分が重視した事実を並べて話すと、次の期に何を示せばよいかがはっきりします。
この記事は一般的な情報をまとめたものです。評価の様式・基準・運用は会社によって異なるため、社内の規程とあわせてご確認ください。
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